名古屋市擁壁(ようへき)|再建築の際の種類と認可の関係について

名古屋市で暮らす私たちにとって、擁壁(ようへき)は身近な物と思います。特に名古屋市の東部地域には丘陵地帯が存在し、かつ、宅地造成工事規制区域(千種区、昭和区、瑞穂区、守山区、緑区、名東区および天白区の合計7区)も指定されています。
この宅地造成工事規制区域は、高低差のある土地を切り開いて(盛土や切土をして)宅地へ変更(平らにして)住宅を建築することが多い地域になります。
その際、土地を切り開いた際に土が流れ出ないように、また、建築した住宅が土砂災害にあわないように土留め壁を設置することが一般的です。この土留めがべが擁壁(ようへき)と呼ばれるものです。
この記事では、名古屋市における擁壁(ようへき)について、再建築の際にどの素材の擁壁であれば許可が下りるのか等解説していきます。
Contents
名古屋市の擁壁(ようへき)
最初に擁壁(ようへき)とは、土留め壁ですが、具体的にどのような役割なのでしょうか。
擁壁(ようへき)とは
擁壁(ようへき)とは、土圧を受け止めるために設けられる構造物のことを指します。主に傾斜地や高低差のある土地で必要とされ、土壌の崩壊を防ぐ役割を果たします。擁壁(ようへき)がしっかりとした基盤を持っていることで、周囲の土地の安全性が保たれ、土砂崩れや崖崩れのリスクを減少させる重要な構造物です。私たちの安全を守り、そのおかげで、安心して生活することができます。
特に、山間部や崖地の近くに家を建てる際には、擁壁(ようへき)の設計と施工が重要になります。擁壁(ようへき)が崩れたり、劣化したりすると、崖崩れや土砂崩れの危険性が高まります。
擁壁(ようへき)と土留め壁の違い
擁壁(ようへき)と土留め壁はどちらも土圧を支えるものですが、規模が違います。規模が違えば、工法も違いますし、素材も違います。また、名古屋市への届出の有無と言った手続きの煩雑さやそれに伴う費用の増加、工期の延長等数え上げたらきりがありません。
土留め壁は、住宅の庭先に設置したりするもので高さも1m未満といったイメージでしょう。素材も木製だったり、薄いコンクリート板だったりブロックで作られていたりします。
対して擁壁(ようへき)は、高低差がある土地に対して設置されるものになり素材ももっとしっかりしたものになります。
例えば、宅地造成工事規制区域以外の地域でも土地の高低差が2m以上あり、安息角が30度を超える崖として認定される土地に、住宅を建築する場合は、愛知県がけ条例に基づき、擁壁(ようへき)を設置する事になります。
愛知県がけ条例に関しての記事は以下の記事をご参照ください。

また、宅地造成工事規制区域内では、
- 盛土で高さが1m超の崖を発生させるもの
- 切土で高さが2m超の崖を発生させるもの
- 盛土と切土を同時に行い高さが2m超の崖を発生させるもの
については、名古屋市長の許可が必要になり、許可するように適合した擁壁(ようへき)を設置しないと許可が下りません。
名古屋市の宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)に関しての記事は以下の記事をご参照ください。

この様に同じ土留め壁ですが、その性質は大きく異なります。
擁壁(ようへき)は何から出来ているのか?素材は?
擁壁(ようへき)と言っても何から作られているのでしょうか。世の中には様々な素材があふれています。ここでは、擁壁(ようへき)は何から作られているのかを順番に見ていきましょう。
コンクリート
コンクリート擁壁は、新たに作られる擁壁(ようへき)の中では最も多いんじゃないでしょうか。このコンクリート擁壁には、中に鉄筋の入っている鉄筋コンクリートと入っていない無筋コンクリートがあります。
間知石や間知ブロック
間知石を使った擁壁(ようへき)は、その名の通り、石を使って擁壁(ようへき)を作っています。昔の工法なので、現在名古屋市でこの工法で建築確認は取得できません。
間知ブロックを使った擁壁(ようへき)は、現在名古屋市で擁壁(よう壁)を作る場合にも用いられている工法です。
大谷石(おおやいし)
大谷石を使った擁壁(ようへき)は、その名の通り、石を使って擁壁(ようへき)を作っています。昔の工法なので、現在名古屋市でこの工法で建築確認は取得できません。
石積み
空石積みの場合は、石を積んだだけの状態です。お城の石垣がまさにその通りです。古い石積みの場合は、石と石との間にセメントを塗って補強してあるものもあったりしますが、表面だけの補強の場合は、正直気休め程度と思います。石積みの表面にあるモルタルが浮いている状態をご覧になったことは無いでしょうか。浮いていること自体表面にしかモルタルが塗っていない証拠になります。
練り石積みの場合は、石と石をモルタル等で接着してある工法です。上記の空石積みよりかは強度はあるものの、どこまでの強度があるかは不明です。
空石積みおよび練り石積みでの擁壁は、現在名古屋市でこの工法で建築確認は取得できません。
コンクリートブロック
コンクリートブロックで塀ではなく擁壁(ようへき)を作っているのを見かけたりします。高さはそこまで無いものの、1.5mを超えるかもしれないものもあったりします。現在名古屋市でこの工法で建築確認は取得できません。
2段擁壁(ようへき)
現代風に例えるなら、ハイブリッドとでも言えるかもしれません。2つの素材が組み合わさって出来ている物になります。例えばコンクリートの擁壁の上に継ぎ足しでコンクリートブロックの擁壁があったりします。この2段擁壁(ようへき)は禁止されているものであり、指導を受ける可能性もあります。
擁壁(ようへき)の種類
名古屋市で新たに擁壁(ようへき)を作る場合、どのようなタイプの擁壁(ようへき)を使用することになるのでしょう。順番に見ていきましょう。
間知ブロック擁壁(ようへき)
名古屋市で間知ブロックによる擁壁(ようへき)の場合、「盛土用」と「切土用」に分かれています。
「盛土用」と「切土用」共に間知石等練積造擁壁になり、高さは5m以下になります。
5mを超えるものについては、別途構造計算が必要になります。
また、過去に造成が行われている場合及び切土と盛土を同時に行う場合には、盛土タイプを使用することとなっています。
間知ブロックのメリット
間知ブロックのメリットは高低差がある場面でも使用でき、コンクリートと比較すると価格を抑えれることです。
間知ブロックとは、6個並べると約1間(180cm)になります。このことから、間知と名付けられたとされています。
間知ブロックのデメリット
間知ブロックのデメリットは、施工する時にがけに対してもたれかかるよう(台形を思い浮かべてもらうとイメージしやすいと思います)に施工するため、土地の有効面積が少なくなることです。そのため、土地の面積には十分に注意が必要です。
無筋コンクリート擁壁(ようへき)
名古屋市で無筋コンクリートの擁壁(ようへき)は、重力式擁壁になります。
2等辺三角形の2等辺の内片方(1辺)を下側に水平にすると、直角が出来ます。そして、立ち上がっている辺が外側の壁になり、一番長い辺の部分までコンクリートで作られています。全てコンクリートで作られているので、重量はかなりあり、この自重によって支えます。
参考:練積み造擁壁の標準構造図
無筋コンクリートのメリット
無筋コンクリートの重力式擁壁のメリットは、鉄筋が不要なため、工期が短くて済み、コストが安く施工がしやすいことです。鉄筋もあるのとないのとでは、価格も違うのは当然ですし、鉄筋を組む手間暇も無くなれば工期も短くなります。
無筋コンクリートのデメリット
無筋コンクリートの重力式擁壁のデメリットは、2等辺三角形で言う、斜めの部分が敷地内に入ってくるため、建築範囲に制限が出てくることです。そして、擁壁(ようへき)の厚みが分厚くなるぶん、撤去するの際ガラが多いことがあげられます。
鉄筋コンクリート擁壁(ようへき)
名古屋市で鉄筋コンクリートの擁壁(ようへき)は、L型擁壁と逆T型擁壁になります。文字が表す通り、L型はL字型をしていますし、逆T型はTを上下さかさまにした形をしています。この擁壁(ようへき)は、新しい擁壁(ようへき)でよくみられる真っすぐの壁の擁壁(ようへき)です。
鉄筋コンクリートは、現場で一から作るいわゆる、現場打ち擁壁とあらかじめ工場で作ったものを設置するプレキャスト擁壁の2種類があります。それぞれの見分け方法としては、現地を確認して、1m又は2m毎に切れ目があるものが、プレキャスト擁壁で、切れ目がなく一体型になっているものが現場打ち擁壁です。
鉄筋コンクリートのメリット
鉄筋コンクリートのメリットは、字型が表す通り、壁が垂直に立ち上がり、かつ垂直の壁が無筋コンクリートの重力式擁壁みたいに厚くないため、土地を最大限有効に使うことができる点です。また、鉄筋コンクリート製なので、構造計算も容易で耐久性も問題がありません。
逆T型は、地中に埋める足の部分が垂直の壁から両方に出るため、隣接地との境界線まで余裕がある広い土地の場合に用いる事が多いです。逆にL型は、地中に埋める足の部分が垂直の壁から片方にしか出ないため、隣接地との境界線まで余裕がない狭い土地の場合に用いる事が多いです。
鉄筋コンクリートのデメリット
鉄筋コンクリートのデメリットは、何と言っても費用がかかる事です。その他は、現場打ちの場合天候に左右されることです。
水抜き穴も必要
コンクリート製と間知ブロック制の擁壁については、全面が覆われてしまうため、地面からしみ込んだ水を抜く穴が必須になってきます。
必要な間隔
水抜き穴については、適当に設けたり、1面当たり〇個と決まっているわけではありません。規則性を保って設ける必要があります。
3㎡以内に少なくとも内径7.5cm以上の穴を1個設ける規定となっています。
水抜き穴が無いとどうなる
水抜き穴が無いとどうなるのでしょうか。当然ですが、水は壁の内側にたまってしまいます。大半は地面を伝って低い方へ流れていきますが、土の中に残る水もかなりあるはずです。例えば、その水分量が多く、土が膨らみ擁壁(ようへき)を押していくことにより、擁壁(ようへき)が膨らんだり、コンクリートの亀裂から水が入ったりすることも考えられます。
コンクリートに水が入るとどうなる
コンクリートに水が入るとどうなるのでしょうか。コンクリートはアルカリ性で出来ています。その中に鉄筋が入っている場合、鉄筋は錆びません。
しかし、コンクリートに亀裂(クラック)が発生してその中に雨水が入った場合、雨水は酸性ですからコンクリートも酸性化してきます。酸性化したコンクリートの中の鉄筋が錆びて、膨張します。鉄筋が錆びる事により膨張して体積が増えます。そうなると周りのコンクリートを押して、コンクリートが剥がれ落ちる現象が起きます。
これを爆裂(ばくれつ)といい、マンションの外壁が落下する事故が起きていますが、まさにこの現象です。
擁壁(ようへき)の亀裂やひび割れに注意
擁壁(ようへき)も新しく作られた物ばかりではなく、戦後すぐに作られた擁壁(ようへき)や、宅地造成等規制法の施行前に作られた擁壁(ようへき)も多数存在します。この様な擁壁(ようへき)はどこを注意すればいいのでしょうか。
外観をチェック
まずは、外観を目視でチェックして、亀裂(クラック)の有無・膨れてきている部分やはらんできている部分の有無をチェックしましょう。その大きさ次第では、緊急に補修等の措置を講じる必要性も出てきます。
亀裂(クラック)から水や土が流れていないか
亀裂(クラック)があったとして、その部分から水が流れていることは多々ありますが、同時に土も流されているのであれば、緊急を要すると思います。直ぐにでも専門業者に見てもらって土の流出を止める必要があります。
不動産売却時に擁壁は重要な判断基準
名古屋市で不動産を売却する際、擁壁(ようへき)の有無や検査済みの有無によって不動産の価値が変わってきます。どう影響するのでしょうか。
擁壁(ようへき)の有無
当たり前ですが、擁壁(ようへき)がある土地や建物になると、この擁壁(ようへき)がこのまま使えるのか、再建築の際に作り直しにならないのかが判断基準になり、価格に反映されてきます。単純に地域の坪単価×面積ではいかないのです。
検査済みの有無
名古屋市に検査済みが残っていれば一安心ですが、検査済みが無い場合、判断は一級建築士に委ねられます。一級建築士が問題ないと判断すれば、擁壁に関しての項目は無くなりますが、問題があると判断されれば、その擁壁(ようへき)はそのままでは使用できず、補修を行うか作り変える事になります。
法施行前からある擁壁(ようへき)
宅地造成等規制法は昭和36年施行ですが、それよりも前からある擁壁(ようへき)についてはどのような判断になるのでしょうか。現在名古屋市の判断では、判断は一級建築士に委ねられます。一級建築士が問題ないと判断すれば、擁壁(ようへき)に関しての項目は無くなりますが、問題があると判断されれば、その擁壁(ようへき)はそのままでは使用できず、補修を行うか作り変える事になります。
名古屋市で擁壁(ようへき)のある土地や一戸建ての売却に関しての記事は以下の記事をご参照ください。

まとめ|自身に合った擁壁(ようへき)を選び安全で快適な住まいを
擁壁(ようへき)は、私たちが安心して生活するために欠かせない重要な構造物です。
その種類や特性を理解し、自身の土地に最も適した擁壁(ようへき)を選ぶことが、安心で安全な住環境を維持する第一歩となります。また、環境整備や定期的なメンテナンスを行うことで、安定した住環境を長期間サポートします。
擁壁(ようへき)の選び方は、専門家と相談しながらしっかりと検討し、自分たちのニーズに合ったものを選ぶことが重要です。名古屋市型擁壁は、地震対策や土砂崩れのリスク軽減に寄与し、都市の安全性を高める重要な構造物です。その耐震性、メンテナンス性、美観、コスト面でのメリットが評価され、今後も普及が期待されるでしょう。
これにより、大切な家族や財産を守ることができるのです。視野を広げ、自分たちに合った最適な擁壁(ようへき)をぜひ見つけてください。







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