名古屋市で崖(がけ)とは?愛知県がけ条例とは?その背景と重要性

名古屋市で暮らす私たちにとって、「がけ」と聞くと自然災害や危険な地形をイメージすることでしょう。
特に、愛知県は山地や丘陵地が多いため、がけに関する条例が非常に重要です。名古屋市内も市中心部から東や東南方面へ行くにつれ丘陵地帯となり高低差が生じます。
ここでは「愛知県がけ条例」について、その概要や背景、そして私たちの生活にどのように関わるのかを深く掘り下げていきます。特に、愛知県建築基準条例第8条の内容を中心に、具体的な定義や適用範囲についても詳述します。
愛知県がけ条例の目的は、がけによる災害から人々を守ることにあります。がけ崩れや土砂災害は、しばしば予測不可能な自然現象であり、これに対処するためには法律や条例によって適切な基準を設ける必要があります。
この条例があることで、私たちの周りの環境がどう守られているのか、どのように配慮されているのかを理解することができ、より安全な生活を実現するための知識が身につきます。
この記事では、愛知県がけ条例についての詳細を見ていきましょう。
一般的な「がけ」については下記もご覧ください。

Contents
愛知県がけ条例とは?
がけ条例は、急斜面やがけにおける安全を確保し、土地の適正利用を促進するために設けられた法律です。
愛知県がけ条例の定義と背景
愛知県がけ条例は、県内に存在するがけに関して適切な整備や管理を促進するために制定された条例です。この条例は、愛知県内の「がけ」の定義を明確にし、それに基づく具体的な指針を提供しています。
がけとは、高さが2メートル以上で、急勾配(30°を超える角度)の地形を指します。
この定義は、建物や道路などのインフラを計画する際に非常に重要です。
不動産業者はこの条例をもとにして宅地や建物の取引を行うほか、建設業者がこの条例を参考にすることで、より安全な構造物を建築することになります。
特に、愛知県は中部地方に位置し、地震発生リスクが高い地域でもあります。そうした中で、がけの安定性を確保するための基準が求められており、その一環としてこの条例が制定されています。
愛知県がけ条例の制定により、関係者は必要な技術的知識やノウハウを持たないまま行動することができなくなりました。これは災害リスクを軽減するためには不可欠な一歩です。
愛知県がけ条例の内容
愛知県建築基準条例第8条は、がけに関する具体的な基準や要求事項を定めています。これは、建築物や土木構造物の設計や施工時に考慮すべき原則を示しており、安全な住宅や公共施設を構築する上で非常に重要です。具体的には、建物ががけの近くに位置する場合、以下のような要件が求められます。
■愛知県建築基準条例 (がけ附近の建築物)第八条
建築物の敷地が、高さ二メートルを超えるがけに接し、又は近接する場合は、がけの上にあってはがけの下端から、がけの下にあってはがけの上端から、建築物との間にそのがけの高さの二倍以上の水平距離を保たなければならない。ただし、堅固な地盤又は特殊な構造方法によるもので安全上支障がないものとして知事が定める場合に該当するときは、この限りでない。
擁壁がある場合、建築基準法に適合するものか、もしくは、宅地造成等規制区域に該当する地区では、宅地造成等規制法に適合するものかどうかを調べる必要があります。
出典:■愛知県建築基準条例 (がけ附近の建築物)第八条
これは要約すると、崖の高さの2倍以内の距離の部分には建築物は建築が出来ないと言うことです。不動産業者間では「2H」と言われています。
全てのがけ付近の土地に当てはまるわけではなく、上記の文章のただし書き以降に「ただし、堅固な地盤又は特殊な構造方法によるもので安全上支障がないものとして知事が定める場合に該当するときは、この限りでない。」とあります。建築基準法や宅地造成等規制法に適合する擁壁(ようへき)等があれば「2H」の距離は保たなくても大丈夫です。
名古屋市の擁壁(ようへき)に関しての記事は以下の記事をご参照ください。

愛知県がけ条例で規制を受ける対象
愛知県がけ条例によって条例で規制を受ける対象を見ていきましょう。
がけの下側でも規制の対象に
がけ条例によって規制を受ける対象となるのは、がけ付近の土地や建物になるわけですが、何もがけの上部に建築物を建築する人だけではありません。
対象となる土地や建物が、がけの下側にあっても「2H」の規制対象になります。このことをお話しすると驚かれる方もいらっしゃいます。
がけの下側でもがけ崩れに巻き込まれる可能性も
対象となるがけに、擁壁(ようへき)が無かったり、建築基準法や宅地造成等規制法に適合しない擁壁(ようへき)等があった場合、がけの下側でもがけ崩れが起きた場合、土石流に巻き込まれる可能性があるため、「2H」の規制対象になります。
がけの所有者に要注意
がけがあれば当然所有している方がいらっしゃいます。ここでは所有者について見ていきましょう。
がけの下側の土地や建物を購入する場合でも注意が必要
がけの下側の土地に建物を建築しようとした場合に、起きる問題として、がけの所有者の問題があります。
がけと言えども敷地の一部なわけですから、当然に所有権があります。この所有権があることによって話がややこしくなったりもします。
がけの所有者が自分の場合
がけの所有者が自分だった場合で、上側に建築物を建築する場合は、がけに擁壁(ようへき)等を自分の意志によって作ることができます。
今度は逆に、下側に建築物を建築する場合でもがけに擁壁(ようへき)等を自分の意志によって作ることができます。
この場合は、建築する際に特に問題なく建築することができます。
当然ですが、近隣に建築されている建物に注意しながら擁壁を作っていきます。ここは工事業者と綿密な打ち合わせが必要なところだと思います。
がけの所有者が隣接地の場合
がけの所有者が隣接地だった場合で、上側に建築物を建築する場合は、そのがけに対して擁壁を作らせてもらって住宅を建築することになるか、崖の手前の地面を掘削して擁壁(ようへき)を設置するかになります。この場合、掘削するにあたりがけは崩れてしまう可能性が大きいため、隣接地所有者と入念な打ち合わせが必要でしょう。
今度は逆に、下側に建築物を建築する場合は、そのがけに対して擁壁(ようへき)を作り住宅を建築することになります。
方法は2つで、まず1つ目は、自分の敷地にL字型の擁壁(ようへき)を作る方法です。この場合、がけに向けてL字型を立ち上げる方法になります。L字型擁壁(ようへき)の背中の部分で隣接地所有者の崖を抑える感じになります。
方法としては、逆L型になると思います。
もう1つは、隣接地の方のがけに対して擁壁(ようへき)を作る方法です。他人の土地に対して擁壁(ようへき)を自分の費用で設置することになるので、かなり難しい話にもなります。
そして、この話をすると大抵のお客様は啞然とします。
ほとんどの方のイメージですが、がけは隣接地の方の所有で、崖崩れ等や土砂災害等が起こらないように隣接地の方が必要な措置を取られていると考えています。
それが嫌であれば、2Hの距離以上を確保して建築することになります。
高さ2メートル以上の高低差でも愛知県がけ条例に該当しない土地
高さ2メートル以上の高低差でも愛知県がけ条例に該当しない土地もあります。ここでは該当しない土地について見ていきましょう。
安息角以内の傾斜である
安息角(あんそくかく)とは一体何でしょう。普段生活するうえでは、ほとんど聞かない言葉です。
安息角とは、荷重がかかっても崩れない限界の角度になります。つまり、安息角よりも低い角度の傾斜であれば土砂が滑り出さないと言うことなので、安息角以内の傾斜の土地にはがけ条例は適用になりません。
愛知県では、がけ条例において、斜面の勾配は原則として30度以下とするよう定められています。
建築基準法や宅地造成等規制法に適合する擁壁(ようへき)等がある
建築基準法や宅地造成等規制法に適合する擁壁等があれば、安息角の30度を超える傾斜が付いていても、愛知県がけ条例に該当しません。
実際に擁壁が建築基準法や宅地造成等規制法に適合するかどうかは、その土地や中古戸建を購入するのであれば、不動産業者に、建築するのであれば建築業者に聞けば大丈夫です。
がけの危険性とその管理
愛知県地域の地形には多くの魅力がある一方で、がけの周辺には注意が必要です。ここではがけの危険性について見ていきましょう。
がけ崩れによる土砂の流出
がけ崩れと言う言葉がある様に、豪雨や地震等の自然災害により崩れたりします。がけが崩れると言うことは、構成していた土砂が流出して下へ流れ出します。
その力は計り知れないもので、家屋等の建築物をも飲み込んでしまうこともあります。一瞬にして家屋が流されてしまうこともあるほどの恐ろしい出来事です。
落石の発生
がけを構成する物の一つに石があります。石と言っても小さいものから岩と呼べるような大きなものまであります。落石はいつ起きるのか分かりません。また、規模も小さいとは限りません。
たとえ拳大の石でも落ちてこれば家屋に被害をもたらすこともあります。
土台の不安定化による建物の崩壊
豪雨や地震と言った自然災害によりがけが不安定になる事により土台が不安定になり建物の基礎が崩壊する恐れもあります。
現在は地球温暖化により豪雨も頻繁に起こり、線状降水帯や線状降雪帯(日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が形成されることで発生)も多く発生しています。
幸い愛知県や名古屋市では甚大な被害は起こっていませんが、今後いつ起きるかもしれません。
地球温暖化の影響での災害
線状降水帯や線状降雪帯(日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が形成されることで発生)を代表とするこれらの自然災害は一瞬にして発生することがあります。特に、愛知県は梅雨シーズンや台風シーズンには大雨が降りやすく、注意が必要です。
このような状況下では、がけからの土砂が流れ出る可能性が高まります。そのため、愛知県がけ条例では、定期的な点検や管理が求められています。
具体的には、がけの勾配や土質、植生などを評価し、必要な対策を講じることが重要です。土砂移動を防ぐための草刈りや、排水対策などがその一例です。それに加えて、地域住民への啓発活動も重要です。住民が「がけ」の危険性を理解し、適切な行動が取れるよう支援を行うことが求められています。
地域と協力しながら、災害リスクを最小限に抑えるための対策を推進することが大切です。
名古屋市の宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)に関しての記事は以下の記事をご参照ください。

住まいに与える影響とリスク管理
がけは私たちの住まいに対してどのような影響を与えるのでしょうか見ていきましょう。
土地利用や建築に対する影響
がけ条例は、もちろん土地利用や建築に対する影響がありますが、長期的には住まいそのものの安全性を向上させるためのものです。では、具体的にどのような影響が考えられるのでしょうか。
考えられるのは、居住地選びへの影響です。可能性として、がけの近くに新たに家を建てたいと考える場合、まずはがけ条例を理解し、指定地域かどうかを確認することが大変重要です。
耐震・耐久性の計画的な配慮が必要
がけ近くの建物は、地震や豪雨時における土壌の流動に影響を受けるため、強固な基礎工事や適切な設計が求められます。これにより、初期投資は増えるかもしれませんが、長期的には安全な住環境の確保につながります。
ポイントとして、住まいを選ぶ際には、住むための土地の情報をきちんと確認することが、思わぬ事故を防ぐための第一歩となります。不安を感じた際は、専門家に相談することも忘れないでください。
まとめ|安全な住環境を築くために
愛知県のがけ条例は、住民の安全を守るために必要不可欠な法律です。この条例を理解し、遵守することは、私たち自身だけでなく、地域全体の安心・安全に寄与します。
土地利用や住居選びにおいては、がけ条例の内容をしっかり把握することが重要です。また、地域社会全体で安全意識を高め、住民同士が協力し合うことが、災害リスクを軽減するためには不可欠です。
私たち全員がこの条例の大切さを再認識し、実践することで、愛知県の美しい自然を活かしながら安全な暮らしを築いていくことができるでしょう。







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